コンビニ イートイン 進化する 自宅以上外食未満の今

街のコンビニに、店内で買った物を飲食できるイートインスペースが増えている。商談、昼寝、受験勉強、デートの待ち合わせから「ちょい飲み」まで、使われ方はいろいろ。しかも都会と地方、ビジネス街と住宅地でまったく違う進化を遂げつつある。「自宅以上外食未満」のイートインを歩いてみると……。【小国綾子/統合デジタル取材センター】

◇「ちょい飲み」OK

「これ全部で、2人で2600円。他で飲む気にならない安さでしょ」。常連の男性会社員(64)のテーブルには、焼き鳥、チキン南蛮、野菜サラダに白菜の一夜漬けのつまみ4品と赤ワイン1本、ビール2缶が並ぶ。つまみは店のスタッフが温め、食べやすく切り、皿にきれいに盛りつけてくれる。グラスは冷えている。生ビールもある。

飲酒を禁じるイートインが多い中、ここ、ミニストップの新業態「cisca(シスカ)」はあえて「ちょい飲みコンビニ」をうたう。営業は午後10時まで。現在、東京都内に5店舗ある。1号店の日本橋本町店はカウンターとテーブルの17席。安さと手軽さが好評で、午後7時を待たずもう満席だ。数人のグループでワインを何本も空ける客もいれば、生ビール1杯で帰っていく1人客もいる。

ミニストップは1980年創業。業界では後発だったため、当初から全店舗にイートインを設置し差別化を計った。14年開業のシスカは、他社がイートインに力を入れ始める中、あえて「ちょい飲みOK」を掲げ、さらなる差別化を狙った形だ。

前出の男性は「スーパーやディスカウントショップで酒を買い家で飲む方が安いけれど、居酒屋よりはここが安い。家と居酒屋の『中間地点』かな」。つまり「自宅以上居酒屋未満」ってわけ。

せっかくなので私も飲んでいくことにした。クラフトビール1缶と、肉売り場でソーセージ3本。ソーセージは温め、切り、盛ってもらって、ビールは冷えたグラスに。これで500円でおつりが。なんかうれしい。

「今夜は満席かあ。次は予約してきまーす」。店をのぞきこんだ5人グループが、そう言うと帰っていく。予約できるコンビニ、って初めてかも。

◇都心では商談も

今、コンビニ各社がイートイン拡充に力を入れている。ファミリーマートとローソンは、事情が許す限り新規出店の全店舗に導入する方針。セブンイレブンは「最初にイートインありきではない」と前置きながらも、「お客様のニーズがあれば導入していく」。大手3社の全国約5万店舗中、既に3割近い店にイートインがある計算だ。

ところでコンビニのイートイン、立地によって使われ方や雰囲気が全然違う。

まずは都心。東京・赤坂のファミリーマート日枝神社前店は、2階建ての2階フロア全部がイートインスペースだ。2人席を中心に席は37人分。見た目はもはやカフェである。

平日午後に訪ねれば、一人でランチ、一人で昼寝、一人で仕事、一人でスマホ……客のほとんどが「お一人様」。半分は女性。無料の電源コンセントや無線LANが使えるので仕事をする人も多い。会社員風の男性2人がやって来るなり名刺交換を始めた。100円コーヒー片手に商談か。スーツ姿の男性が現れ、ノートパソコンを開いて一人で仕事中の女性に「◯◯さんですか?」。こちらもコンビニで仕事の打ち合わせらしい。

商談の隣では、若い女性がテーブルにカバンを置き、その陰に隠れるように寝息を立てている。商談と昼寝が隣り合わせる昼下がり。お互いのことに構わないのがルールみたいだ。

◇寝やすいですか?

都会では、昼下がりのカウンター席には、たいてい昼寝客がいる。女性が3人並んで寝ていたり、求人雑誌を枕に男性が3時間寝ていたりするのを見たこともある。

コンビニって、そんなに寝やすいですか?

勇気を出して聞いてみた。20代の女性は「だって男性は職場や喫茶店でも寝られるけど、女性には無理。でも、コンビニではなぜか周囲の目が気にならないんです。知り合いがいないし、1人でいても変じゃない場所だからかな」

イートインのカウンター席の間隔はせいぜい70センチ。男性トイレの小便器の快適な間隔は、ひじを広げられる75~90センチというから、それより狭いくらいだ。それなのに人々はまるで個室にいるかのように、周囲を気にせずくつろいでいる。

繁華街の別の店ではデートの待ち合わせに使うカップルや、「予備校の自習室より落ち着く」と勉強する浪人生も見た。

たいていの店は飲酒や喫煙のほか、飲食品の持ち込みを禁じているが、持ち込み禁止の表示のない店舗では、小さな紙パックの野菜ジュースを一つだけ買って、堂々と持参した大きな保温式弁当箱を広げる若い男性を見たこともある。のんびりスマートホンをながめながら弁当を食べる男性の隣で、思わずそっと弁当箱をのぞき込んだら、おいしそうな卵焼きや唐揚げが並んでいたのだった。

◇小学生からお年寄りまで

東京から電車とバスで2時間近く。埼玉県日高市の広大な団地の中にファミリーマート飯能日高団地店はある。2014年開店の店にはソファなど4人掛け中心に22席のイートインがあり、一見ファミリーレストラン風。平日午後2時前、30代の女性3人がアイスコーヒーで談笑中。幼稚園バスのお迎え前の井戸端会議だという。

「ほかにも近所の自治会の会合でもよく利用します。誰かの家を訪ねるより気楽ですから」。まるで公民館かコミュニティーセンターのようだ。

午後3時ごろ、小学6年生の女の子が2人がやってきて、ソファ席でおにぎりをむしゃむしゃ。「コンビニに行く、と言ってママからお金をもらった」という。「4年の時にこの店ができて以来ずーっと来てる。週2回ぐらい。友だちとおしゃべりするの。宿題することもあるよ」。物騒な世の中だから、母親だって我が子が公園で遊ぶより、コンビニ店内にいてくれた方がずっと安心なのかも。

夕方は、散歩帰りのリタイア組男性がちらほら。1人客だが、近所の知り合いを見つけると話しかけたりもするみたい。近所に暮らす従業員女性(66)が1日の風景を教えてくれた。「朝は、夫婦や親子がここで食事し、出勤・通学する姿を見ます。お昼は近所のお母さんたちが待ち合わせて、思い思いのコンビニ弁当を買ってランチ。夜になるとペットボトルの飲み物1本で黙々と受験勉強している高校生も」。ここで食べればゴミも出ないし、食器洗いもいらない、と老夫婦が夕飯を食べていくこともある。

昼寝する人を見かけませんねえ、と尋ねたら、女性従業員に大笑いされた。「そりゃ、ご近所の目がありますからね」

◇雑誌売り場→イートイン

なぜ都心と地方でこんなにも違うのか。ファミリーマート広報室の津瀬暁子さんは「地方では都心と違うサービスをしないとシニア層や女性客を引きつけられない」という。「ソファ席を増やしたり、キッズスペースを設けたり、コミュニティーの拠点になる場所を目指しています」とも。

各社が貴重な売り場面積を削ってまでイートインを導入するのは、集客率アップや「ついで買い」効果が期待されるから。「女性・シニア層の来店動機にも結びつくようです」と津瀬さんは説明する。

コンビニの、道路に面したガラス張りのスペースはかつて、立ち読み客のにぎわいを外に見せるための雑誌置き場だった。今は次々にこのスペースが、イートインのカウンター席に変わりつつある。食事を取る女性客が外から見えることが、女性客やより幅広い年齢層の客の入りやすさにつながるからという。

◇糖質制限ダイエットにも

健康志向のイメージで女性にも人気の「ナチュラルローソン」のとある店舗では、週5回、平日は毎日そこで昼食を食べる、という女性(25)にも会った。

「普通の飲食店で外食すると炭水化物中心のメニューが多いし、1人で入りにくい。コンビニは入りやすく、しかも、総菜だけ食べれば炭水化物を抑えた食事ができるから。毎日ここでも飽きません」

わかる。かくいう私自身、仕事でバタバタしていて昼食を食べ損なった昼下がりは、会社1階のコンビニのイートインに向かう。たいてい、野菜ジュースと海草サラダと野菜の煮付け……。

コンビニのイートインは、「糖質制限ダイエット」にも格好の場所なのだ。

コンビニが素材になる小説や漫画が増えている。昨年はコンビニでアルバイトをしている女性を主人公にした小説「コンビニ人間」(著・村田沙耶香さん)が芥川賞を受賞した。

月刊少年マガジンに連載されている「コンビニお嬢さま」は、京都市の漫画家、松本明澄(あすむ)さんの初連載作品だ。主人公は深窓のお嬢様。しつけが厳しくコンビニでの買い食いを許してもらえないが、本人はコンビニが大好き。それでこっそり買い物しては家に持ち帰り、自宅でアレンジ料理を試みる、というコンビニグルメ漫画。例えば、コンビニで買った茶わん蒸しとサケおにぎりを土鍋で煮れば、絶妙な味の雑炊のできあがり……という具合だ。

松本さん自身、「イートインはよく利用します。外で1人で食べ歩きするのは人目を気にしてしまうタイプなので、店内でゆっくり食べられるスペースはありがたい。電源完備の所が多くて便利ですね」。同作品にイートインの場面は登場しないが「買い食いを禁じられている主人公の夢の一つは、買ったものをすぐにイートインで食べること」(松本さん)だとか。少年誌の連載ながら、女性読者の方が多いという。

◇「ながら食べ」の受け皿に?

20年間、食卓と家族の研究を続けてきた岩村暢子・日本能率協会総合研究所客員研究員は「コンビニが一般家庭の食卓の一端をすでに担っているとまでは言えないと思います」と前置きしつつも、「ここ数年はレストランでも自宅でもない場所で食事をする人が増えている」と指摘する。

「会社の自席でパソコンを見ながら、移動の車中で、時には歩きながら。忙しかったり、家庭で食事が用意されなかったりして、移動の途中で食べる人々が増えているんです」。

家族が違うものを、違う時間に違う場所で食べる傾向も進む。しかも、日によって家族の予定もばらばらだ。「夕飯に皆でつつく卓上料理や出来たての料理を用意する家庭が減っている。朝ご飯はもはや『家で食べるもの』ではない。家庭で用意するには効率が悪いからです。しかも、食事だけのために時間を使わない『ながら食べ』も増えている」と岩村さん。コンビニのイートインの増加について、「移動途中で食べる層や『ながら』食べの受け皿になっている可能性が十分にあります」と語る。

そういえば、コンビニで食事する人々のほとんどがスマートホンをいじっていたっけ。

コンビニのイートインをのぞき見れば、その街と人々の暮らしが見えてくる。